エントランスで待たれ、2時間で契約——翌朝、解約に「900万円」
「今、お宅を買いたいという人がいます」。突然の電話から2時間後、その人は自宅の売却契約に署名し、手付金450万円を受け取っていた。本当は、売るつもりなどなかった。翌朝かけた解約の電話で、告げられた金額は——900万円。高齢者を中心にした自宅売却の勧誘トラブルから、急かされたときの止め方を見ていく。
事例
ある80代の人のもとに、不動産業者から突然電話があった。「お宅を買いたいという人がいる」。話を急がれたが、病院の予約を理由に、その日は断った。
病院から戻ると、エントランスで営業の人が待っていた。家に上げると、話は止まらない。「買いたいというお客様がいて、今を逃すと、この金額ではもう売れません」「これから不動産は下がる一方ですよ」。畳みかけられ、住み替え先も紹介するからと、断る間も与えられないまま、話は契約へ進んでいく。気づけば、内容をよく理解しないまま署名し、手付金として約450万円を受け取っていた。契約は2時間ほどで成立し、営業の人は帰っていった。
翌朝、一人になって冷静に考え、はっとした。言われるままに、自宅を売る契約をしてしまっていた。後悔して、すぐに解約を申し出る。返ってきた答えは、「解約するなら、約900万円を払ってほしい」だった。
解説
売買契約で手付金を払った後は、相手が契約の履行に着手する前であれば、買主は手付金を放棄して、売主は受け取った手付金の倍額を支払って、契約を解除できます。今回「約900万円」を求められたのは、受け取った手付金約450万円のおよそ倍にあたる金額です。手付による解除は、思っているより高くつくことがあります。
また、自宅などの売却契約には、訪問販売のようなクーリング・オフの仕組みが当然に使えるわけではありません。「クーリング・オフできると思っていた」という相談は少なくありません。
国民生活センターには、突然の訪問や電話、長時間の勧誘、その場での契約といった相談が、数多く寄せられています。なお、契約しない意思を示した相手にさらに勧誘を続けることは、宅地建物取引業法で禁じられています。「今日は帰ってください」と伝えても勧誘がやまない場合、それ自体が違反にあたることがあります。
契約前に、この一言で確認できる
今日は決めません。家族に相談してから連絡します。契約書と手付金の条件を、書面で置いていってください。
その場で署名・入金しなければ、手付による高額な解除トラブルを避けられる。勧誘の継続は法律で禁じられているため
確認のポイント
- 「今すぐ」「今だけ」と急かされても、その場で署名・入金しない
- 手付金は売買代金の何%か、解約するといくら払うことになるかを契約前に確認する(業者が売主なら手付は20%が上限)
- 「今日は決めません」と伝えたあとも勧誘が続くときは、きっぱり帰ってもらい、日時・会社名・担当者名・内容を記録する(断った相手への再勧誘は法律で禁じられている)
- 高齢の家族がいる場合、突然の自宅売却の話には家族も一緒に対応する
- 署名・入金してしまった後でも、消費生活センター(188)に早めに相談する
関連する解説・チェックリスト
もし、もう困っているとき・確かめたいときの公的な窓口
トラブルにあったときも、契約前の確認のときも、次の公的な窓口に相談できます。いずれも中立の公的機関です。
- 消費者ホットライン 188(いやや) →
契約や解約でのトラブル・不安を、まず相談できる最寄りの消費生活センターにつながります。
- 国土交通省 宅地建物取引業者 検索 →
免許の登録内容を、国の公式データベースで直接確認できます。
- 国土交通省 ネガティブ情報等検索サイト →
行政処分の記録を、公表元で直接確認できます。
- 不動産適正取引推進機構(RETIO) →
不動産取引の相談・紛争処理を扱う公的な機関です。