建て替えようとして知った——その土地に、新しい家は建てられない
相場より、ずっと安い土地だった。古い家は建っていたが、いずれ建て替えればいい——そう思って買った。何年か住み、いざ古い家を壊して新しく建てようとしたとき、わかる。「ここには、建てられません」。市街化調整区域と呼ばれる土地で起きやすい話だ。実際の裁判例から、契約前にできることを見ていく。
事例
ある人は、相場よりかなり安い土地を見つけた。古い家は建っていたが、住みながら、いずれ建て替えればいい。仲介の担当者にも「古いですが、建て替えはできますよ」と言われ、その土地を買った。
何年か暮らし、家の傷みが目立ってきたころ、建て替えを決めた。設計を頼み、いざ建築の手続きを進めようとして、初めて知る。その土地は市街化調整区域にあり、今の自分の計画では、新しい家を建てる許可が下りなかった。
市街化を抑えるための区域で、決められた条件に当てはまらなければ、新築も建て替えも許可されない。古い家を壊しても、その跡地に新しい家は建たない。市街化調整区域であることや建て替えの制限を十分に説明しなかったとして、仲介した業者に損害賠償が認められた裁判例もある。
解説
都市計画法は、街を計画的に広げるために、区域を「市街化区域」と「市街化調整区域」に分けています。市街化調整区域は、市街化を抑制すべき区域とされ、建物を建てたり建て替えたりするには、原則として行政の許可が必要です。許可できる建物の種類は法律で限られていて、その条件に当てはまらないと、自分の土地であっても新築・建て替えができません。更地にして建てる場合だけでなく、今ある家を壊して建て替える場合にも、この許可が必要になります。
市街化調整区域であることや、そこでの建築の制限は、契約前の重要事項説明で宅地建物取引士が説明すべき事項に含まれます。これを十分に説明しなかったり、「建て替えできる」と誤って説明したりして、後から建てられないと判明した場合に、業者の説明義務違反として損害賠償が認められた裁判例があります。一方で、書面できちんと説明されていれば、買主側の請求が認められなかった例もあります。だからこそ、口頭の説明だけでなく、書面と行政の回答で確かめておくことが大切です。
なお、「建て替えられない土地」には、別の原因もあります。市街化区域の中にある土地でも、敷地が建築基準法上の道路(原則として幅員4メートル以上)に2メートル以上接していないと、建築の確認が下りず、再建築できないことがあります。市街化調整区域は都市計画法、接道の問題は建築基準法と、根拠が異なります。安すぎる土地や古家付きの土地は、どちらの理由で安いのかを、買う前に切り分けて確認しておくと安心です。
契約前に、この一言で確認できる
この土地は市街化調整区域ですか?今の私が、ここに住宅を新築・建て替えできますか?できるなら、その根拠(都市計画法上の許可や条件)を書面でいただけますか?
市街化調整区域では建築が許可制で、誰でも建て替えできるとは限らない。建築できるかどうかと、その根拠を契約前に書面で確認すれば、買った後に「建てられない」と知る事態を避けられるため
確認のポイント
- 相場より明らかに安い土地・古家付きの土地は、なぜ安いのかを契約前に確認する
- その土地が市街化区域か市街化調整区域かを、市区町村の都市計画課で確認する
- 自分がそこに新築・建て替えできるか、開発・建築許可の担当窓口に直接たずねる(案内図・公図・登記事項証明書を持参すると相談が早い)
- 前面の道路が建築基準法上の道路(原則幅員4メートル以上)か、敷地が2メートル以上接しているかを建築指導の窓口で確認する
- 重要事項説明書の「法令に基づく制限」の欄を契約前に読み、口頭の「建てられます」だけで判断しない
- 判断に迷うときは、消費生活センター(消費者ホットライン188)に相談する
関連する解説・チェックリスト
参考(一次ソース)
もし、もう困っているとき・確かめたいときの公的な窓口
トラブルにあったときも、契約前の確認のときも、次の公的な窓口に相談できます。いずれも中立の公的機関です。
- 消費者ホットライン 188(いやや) →
契約や解約でのトラブル・不安を、まず相談できる最寄りの消費生活センターにつながります。
- 国土交通省 宅地建物取引業者 検索 →
免許の登録内容を、国の公式データベースで直接確認できます。
- 国土交通省 ネガティブ情報等検索サイト →
行政処分の記録を、公表元で直接確認できます。
- 不動産適正取引推進機構(RETIO) →
不動産取引の相談・紛争処理を扱う公的な機関です。