「問い合わせが来ません」と数ヶ月——売れない理由は別にあった
売却を任せた大手から、毎月届く報告は同じだった。「問い合わせが少なくて、時間がかかっています」。何も起きないまま、数ヶ月。だが売れない理由は、市場ではなく、もっと近いところにあった。「囲い込み」と呼ばれる状態だ。売主が自分で確認できることを見ていく。
事例
ある人は、マンションの売却を大手の不動産会社に専任で任せた。担当者からの報告は、いつも同じだった。「問い合わせが少なく、時間がかかっています」。
潮目が変わったのは、近所の不動産会社からのひと言だった。「お宅の物件、紹介したいお客さんがいたんですが、断られてしまって」。買い手はいたのだ。他社が連れてきた問い合わせを、売却を任せたはずの会社が「今は紹介を止めています」と断っていた。そんな指示をした覚えは、なかった。
結局は値下げをして、その会社自身が連れてきた買主と契約した。もっと早く、値下げもせずに売れていたかもしれない。残ったのは、その思いだけだった。
解説
売主が1社に売却を任せる「専任媒介」「専属専任媒介」では、その会社は物件情報をレインズ(不動産会社間の情報システム)に登録する義務があります。囲い込みとは、登録はしていても、他社から「買主を紹介したい」と問い合わせがあったときに、正当な理由なく断り、売主に取り次がない状態をいいます。
背景には、売主と買主の両方を自社で担当して手数料を双方から受け取る「両手仲介」を狙う動きがあるとされます。他社が買主を連れてくると両手になりにくいため、他社の紹介を断る、という流れが起きやすくなります。売主から見ると、買い手の候補が狭まり、売却が長引いて、結果として値下げにつながることがあります。
こうした状況に対し、2025年1月から、レインズの取引状況の登録ルールが見直され、売主が専用の画面で登録内容や取引状況を確認できる仕組みが整えられました。「売主の都合で一時紹介停止中」といった表示が、自分の知らないうちに付いていないかを、売主自身が確認できます。
契約前に、この一言で確認できる
レインズの登録証明書と、売主が取引状況を確認できるID(またはQRコード)をください。取引状況が「紹介停止」などになっていませんか?
売主が自分でレインズの登録と取引状況を確認できる。知らないうちに紹介を止める表示が付いていないかを見抜けるため
確認のポイント
- 専任で任せたら、レインズの登録証明書を受け取る(登録は義務)
- 売主専用の確認画面のID・パスワード(2025年1月からはQRコード)をもらい、自分で登録・取引状況を確認する
- 自分は申込や紹介停止を依頼していないのに、取引状況がそうなっていないか確認する
- 契約前に、他社からの紹介もそのまま通すか、両手の方針を確かめる
- 報告が「反応がない」ばかりで説明に納得できないときは、都道府県の宅地建物取引業の窓口や消費生活センター(188)に相談する
もし、もう困っているとき・確かめたいときの公的な窓口
トラブルにあったときも、契約前の確認のときも、次の公的な窓口に相談できます。いずれも中立の公的機関です。
- 消費者ホットライン 188(いやや) →
契約や解約でのトラブル・不安を、まず相談できる最寄りの消費生活センターにつながります。
- 国土交通省 宅地建物取引業者 検索 →
免許の登録内容を、国の公式データベースで直接確認できます。
- 国土交通省 ネガティブ情報等検索サイト →
行政処分の記録を、公表元で直接確認できます。
- 不動産適正取引推進機構(RETIO) →
不動産取引の相談・紛争処理を扱う公的な機関です。