内見した部屋に、売主が普通に住んでいた——契約後に知った事実
内見した部屋には、売主の一家が住んでいた。子どももいて、ごく普通の暮らし。だからこの家族も、何の違和感もなく契約した——その部屋で過去に何があったかを知るのは、もっとあとのことだ。告げられなかった「心理的瑕疵」は、裁判にもなっている。実際の事例から、契約前にできることを見ていく。
事例
家族で永住するつもりだった。中古マンションの一室を、約3,200万円で買う。内見のとき、その部屋には売主の一家が普通に暮らしていて、不安に思う要素はどこにもなかった。
きっかけは、住みはじめてからの、近所の人との何気ない会話だった。「あの部屋は……」と、言葉を濁される。引っかかって調べてみると、数年前、その部屋のベランダで前の住人が亡くなっていた。売主の一家は、その事実を知ったうえで住み続け、買主には伝えていなかった。
売主の言い分は、「もう何年も前のこと。うちは普通に住んでいた。告げる義務などない」というものだった。だが裁判所は、これを認めなかった。子どもを含む家族が永住するつもりで買う場合、その部屋で人が亡くなった事実を知っていれば、普通は買わない——だから売主は告げるべきだった、という判断だ。契約は解除され、違約金の支払いが認められた。
解説
過去に人の死があった物件で、それが住み心地に関わる場合、不動産会社や売主は、その事実を買主・借主に告げる必要があることがあります。これは「心理的瑕疵」と呼ばれ、告げられないまま契約すると、後でトラブルになります。
裁判では、家族で永住するために買った人にとって、こうした事実を知っていれば通常は買わなかったといえる場合に、契約の解除や損害賠償が認められた例があります。数年という期間の経過だけでは、告げなくてよい理由にはならないと判断されたケースもあります。
国土交通省のガイドラインでは、賃貸は「概ね3年」を一つの目安にしつつ、売買には明確な期間の定めがありません。そして、買主・借主から問われた場合は、経過した期間にかかわらず、調査で判明した事実を告げる必要があるとされています。つまり、こちらから質問すれば、答える必要が生じます。
契約前に、この一言で確認できる
この部屋・建物・敷地で、過去に人が亡くなった事案はありますか?告知書に記載してください。不明であれば「不明」とご回答ください。
問われれば業者は答える必要がある。書面に残せば、後から確認でき、判断材料になるため
確認のポイント
- 売買・賃貸とも、過去の事案の有無を契約前に書面(告知書)で確認する
- 自然死以外(自殺・他殺・事故死・特殊清掃を伴う孤独死)がなかったかを具体的に聞く
- 前の所有者・貸主や管理会社にも確認してもらう。不明ならその旨を書面に残す
- 隣の部屋や共用部(エレベーター・階段・ベランダ)での事案も確認する
- 売主が個人の場合は、告知書に売主自身の記名をお願いする
- 気になるときは、確認した内容を記録し、消費生活センター(188)にも相談できる
関連する解説・チェックリスト
参考(一次ソース)
もし、もう困っているとき・確かめたいときの公的な窓口
トラブルにあったときも、契約前の確認のときも、次の公的な窓口に相談できます。いずれも中立の公的機関です。
- 消費者ホットライン 188(いやや) →
契約や解約でのトラブル・不安を、まず相談できる最寄りの消費生活センターにつながります。
- 国土交通省 宅地建物取引業者 検索 →
免許の登録内容を、国の公式データベースで直接確認できます。
- 国土交通省 ネガティブ情報等検索サイト →
行政処分の記録を、公表元で直接確認できます。
- 不動産適正取引推進機構(RETIO) →
不動産取引の相談・紛争処理を扱う公的な機関です。