「定期借家」のはずが、住み続けられた——更新できないと言われたら
「定期借家なので、期間が来たら更新できません」。そう言われ、退去を求められた。契約書にも、確かに「定期借家」と書いてある。出ていくしかない——と思いきや、結論は逆になった。鍵を握っていたのは、渡されなかった「2枚目の書面」だった。実際の裁判例から見ていく。
事例
ある借主は、契約書に「定期借家」「更新なし」と書かれた部屋を借りていた。期間の満了が近づくと、貸主から契約終了の通知が届く。
出ていく前に、借主は調べてみた。すると、定期借家が成立するには、契約書とは別に、「更新がなく期間満了で終了する」と記した事前の説明書面を、貸主から受け取っている必要があるとわかった。その2枚目を、借主は受け取っていなかった。
結果は、逆転した。事前の説明書面を渡していない以上、「更新はない」という取り決めは成り立たない。そう判断され、借主はそのまま住み続けられることになった。出ていけと言ったはずの側が、逆に立退料を払って和解した例もある。
解説
定期借家契約は、期間が満了すると更新されずに終了する契約です。更新が前提の普通の賃貸借とは違うため、借地借家法は、成立に二つの条件を求めています。一つは、書面(公正証書など)で契約すること。もう一つは、契約より前に、貸主が借主に対して、「更新がなく期間満了で終了する」と記した書面を交付して説明することです。
大切なのは、この事前の説明は契約書とは別個の書面で行う必要があり、説明する義務は貸主側にある、という点です。仲介会社の重要事項説明だけでは、この義務を果たしたことにならないとされた裁判例があります。最高裁は、借主が定期借家だと認識していたかどうかにかかわらず、別個の説明書面がなければ更新がない定めは無効になる、と判断しています。
条件が欠けると、「更新がない」という約束だけが無効になり、契約自体は普通の賃貸借として残ります。その場合、借主は期間満了後も住み続けられることがあります。
契約前に、この一言で確認できる
これは定期借家ですか、普通借家ですか?定期借家なら、契約書とは別に「更新がなく期間満了で終了する」と書いた事前説明の書面をいただけますか?
定期借家は契約書と別の事前説明書面の2枚で成立する。受け取った日付とともに確認すれば、後で更新の有無を判断できるため
確認のポイント
- 契約が定期借家か普通借家か、更新があるかを最初に確認する
- 定期借家なら、契約書とは別の事前説明書面を受け取る(これがないと定期借家として成立しないことがある)
- その説明が、仲介会社ではなく貸主(またはその代理人)からのものか確認する
- 契約終了の年月日と、満了後に再契約できる保証が書面にあるかを確認する
- 更新できないと言われて納得できないときは、消費生活センター(188)に相談する
関連する解説・チェックリスト
もし、もう困っているとき・確かめたいときの公的な窓口
トラブルにあったときも、契約前の確認のときも、次の公的な窓口に相談できます。いずれも中立の公的機関です。
- 消費者ホットライン 188(いやや) →
契約や解約でのトラブル・不安を、まず相談できる最寄りの消費生活センターにつながります。
- 国土交通省 宅地建物取引業者 検索 →
免許の登録内容を、国の公式データベースで直接確認できます。
- 国土交通省 ネガティブ情報等検索サイト →
行政処分の記録を、公表元で直接確認できます。
- 不動産適正取引推進機構(RETIO) →
不動産取引の相談・紛争処理を扱う公的な機関です。